**シリウスからの歌声(4)**

**宇宙からの歌声**ホームページ>>
個人セッションの案内はこちら>>>
開催予定のイベント案内はこちら>>


c0319737_22334058.jpg

今までのお話>> **シリウスからの歌声(1)〜(4)**

   ・

「あのね、芳樹の話、私・・・私ね・・・」
言葉を出そうとすると涙が溢れてくるようで、そのあとに言葉が続きません。

「ゴメン、今日はこれでおしまいでいい?」
「あ、うん、そうだね、随分時間も経ってしまったよね。自分ばかり話してごめんね」

「今度のバイトはいつ?」
「ええと、明後日の15~19時」
「わかった」

そう言うと、百合香は自分の荷物を抱えて、席を立とうとします。

芳樹もそれに遅れまいとテーブルに広げたスマホや小物を急いでバックに積み込み始めます。

すると百合香が
「私先に帰るね」
そう言うとひらりと身を翻し早足で店を出てゆくのです。

芳樹は気が抜けたように椅子に腰を下ろし直し
『だよね~こう言う話をいきなり初めての女の子に話すって、自分どうなのよ!』

なんとも自分は間抜けで、いつも空気が読めなくて好きになる子に振られてきた情けなさが湧いてきます。

百合香に振られたと思った芳樹は、もう完全に廃人となりつつ家に帰り、母親が用意してくれた夕食を大急ぎで掻き込み自室にこもります。

カフェで話し始めた時にメアドとラインのIDは交換していたので、百合香に連絡しようと思えばできます。
でも、彼女の反応が不安で、スマホを持ったまま何もできません。

もともとすぐにクヨクヨしがちな彼ですので、その夜もず~っとクヨクヨの連続で、あっという間に夜中になり、明け方まで悶々とするのです。

芳樹は大学4年生
同級生たちは皆就職も決め、社会人になる準備を始めているのですが、芳樹はどうしても就職という言葉に何か言い知れぬ抵抗感があり、特にネクタイを締めるということを想像するととても自分が会社勤めなどできないと知っていたのです。

父親からは最初口うるさく将来のことや、男の夢などという古くさい話を耳タコで聞かされたのですが、やがて呆れたのか最近では
「まあ、自分のことを面倒見られるのであれば、正社員にこだわらなくても・・」
そう言ってくれるようになっていました。

母親は父親よりもっとぶっ飛んでいて、
「生きると言うことは仕事することではないよ」
などと文科省と通産省の役人が聞いたら激怒しそうなことを平気で言う母親でしたので、卒業後の自分の進路が今だに不明確な芳樹が居場所をなくしてしまうことはありません。

でも母親も
「卒業したら、自分で生きて行きなさいね。スネなんか齧られてたまるか」
としっかり念押しされてもいましたけど。

唯一、妹の加奈だけは違います。
「兄貴は私の反面教師だ、こんな駄目男を見ていたおかげで私は社会人への誇りが持てる!」と

さて、悶々と過ごす日が2目になります。
何もする気が起こらず、授業が2限までだったので、すぐに自宅に戻ってまた悶々。
もう半ば百合香のことは諦めようと思い始めた時、その百合香から連絡が入ります。

ドキドキしながら読むと

「昨日ごめん、急に帰ったりして。私なんかすごくおかしくなってしまったんだよね。うまく言えないけど芳樹の話聞いてたら涙が止まらなくなってしまってさ。ビックリしたよね?明日バイト終わったら会える?」

ベッドに座ってメッセージ読んでいた芳樹は、ベッドからずり落ちてベッドの角で思いっきり後頭部をぶつけてしまうのですが・・

「うお~~!うお~~~!」
隣室の妹が「うるさい!」とばかりに壁を蹴り飛ばすことも意に介さず雄たけびを上げてしまいます。

「うん、うん、いいよう。明日のバイトの後はフリーフリー」
実はバイトの後友人と約束していたけどドタキャン決定。










[PR]

by farmemory | 2017-08-11 05:28 | ・シリウスからの歌声 | Trackback | Comments(1)

トラックバックURL : http://dimension5.exblog.jp/tb/26881334
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented at 2017-08-17 20:49 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。