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**シリウスからの歌声(3)**

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今までのお話>> **シリウスからの歌声(1)〜(3)**

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二人のバイト先は四谷にあります。

百合香の家は偶然にも芳樹が住む中央線の阿佐ケ谷駅から少し先、三鷹に住んでいること。
自分と同じ四谷にある大学に通っていて文学部にいること、自分たちのことなどいろいろと話し始めます。

普段はぼんやりで、女の子とそんなに多く付き合った経験もない芳樹にでも、百合香が自分に好意を持っていることがなんとなく感じられ
「なんか恋の始まりか~!!」
などと浮かれたのもつかの間。

そんな話を続けている内に、また急に不思議な感覚が浮かだのです。
デジャブのようなもので、二人が話している光景を、遠いどこかで経験した記憶のような思いが湧きあがります。
でも、その時には目の前の彼女の姿は、金髪の女性には変化していません。

でもその不思議な感覚は先ほど幻のよう見た姿よりも更に強烈なリアリティがあってなりません。
芳樹はそれがとても気になり始め、せっかく百合香とお茶をして、できることならこの先・・ウニャウニャ・・のはずが

「ねぇ、話変えてもいい?」
「何?」
「あのさ、笑わない」
「うん、な~に?」

百合香の目には、もしかすると芳樹が自分に好意を持っていて、それをコクってくれるのかなという小さな期待のような光が見えたのですが・・
芳樹にはそれを超えた彼女への興味の方が遥かに強くなってきて、百合香の好意を感じながらも、その一連の不思議を話さずにはいられなくなってきたのです。

「あのね、さっき百合香。あっ百合香って言っていい?」
「うん、いいよ、私も芳樹っていうね」

「で、百合香がお店から先に出た後、俺も後から追いかけるように出たんだよ。それで百合香の後姿見ていたら急に姿が違って見えたんだ」
「へぇ〜〜、どんな姿?」
「ええとね〜なんかギリシャ?の古い時代の髪とかも金髪で、今の百合香より背も高くてさ。だけどその姿を初めて見た気がしなかったんだよね」

「・・・!」

百合香が息を飲んで黙り始めたのは知っていたけど芳樹は話を止められずに続けます。

「俺百合香と初めて会った時、初めてって気がしなかったんだよね。誰かに似てるとかそういうんでは無くて。うまく説明できないけど・・なんか俺この人知ってるって、なんと無く」
「で、今日見た幻みたいな姿も、それも知ってるって、そう思ったんだよね。なんかその姿お姫様か女神様みたいでさ」

「でも不思議なのは、その姿を見た時驚いたり不思議って思うよりなんだかすごく懐かしい感じがしてね・・」

「それにさっき席に着いた時にもすごく不思議な感じがしてさ、デジャブってやつ?」
「初めて百合香と話をするはずなのに、随分前に何度もこうして話をしていたことが頭に浮かんだんだよね」

最初は怪訝な顔で聞いていた百合香が、話を続ける内に目にうっすらと涙が浮かんでくるのです。
芳樹も芳樹で、一旦話し始めたので、彼女のその反応を知りつつも話を止める事が出来ず、
今日自分が見た幻やこの場で感じたデジャブ感、
幼い頃から感じてきた不思議な記憶、
心の中に浮かんでくる出所のわからない温かい声のような感覚のようなもの、
そして百合香に初めて会った時から心の奥底になんとも言えない懐かしさのような、恋しさのようなものが浮かんだことなどなど、

もう彼女の反応など気にすることもできず怒涛のように伝えるのです。
ひとしきり話すと、はっと我に返った自分が、随分と一人で話してしまったことに気がつき、改めて百合香に目をやります。

百合香の目には溢れるほどの涙が、やがて頬を伝って流れて来ます。
ハンカチを取り出し、涙をぬぐいながらも、次から次に出てくる涙を拭ききれないほどです。

さすがに芳樹はそんな彼女にうろたえ

「あの、どうした?何か変な話ししちゃった?」
「何か気に障った?」

我に返った芳樹は、今度はせっかく彼女が最初に自分に好意を持ってくれてると感じたのに、こんな話を続けてた事を少し後悔し始めてしまいます。

「あのね・・・」

「うん」
芳樹は百合香の言葉を待ちます。








by farmemory | 2017-07-22 00:56 | ・シリウスからの歌声 | Comments(0)

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